発達障害か個性か? 親の捉え方で子は変わる

2022年2月10日

発達障害

1. 他の子との違いは発達遅れ?発達障害?

育児をしている母親の心配事と言えば、我が子が月齢の目安通りに発達しているかどうかが大きいと思います。母子手帳を見ては月齢の目安を見て子どもと見比べてみたり、SNSを見て子どもと比べてみたり、とにかく周りと比べて子どもが遅れているところはないかと心配する母親は多いですよね。

私も息子が産まれ、初めての育児ということもあり、周りの子やインターネットで出てくる発達についての情報とにらめっこして一喜一憂して過ごしていました。
4歳の息子は1歳頃から発達に気になるところがあり、一時期は療育教室に通いました。幼稚園は通常の私立幼稚園に入園しましたが、今も年に1回のフォローアップ検診を受けている状態です。

息子の発達が心配で悩んだ時期、発達に悩む母親がどんな心構えで過ごしていくべきか、子どもとどう接したらいいのか、母親のための情報が少ないことに心細く不安な日々を過ごしました。
悩みをもつお母さん方が少しでも育児に前向きに向き合えるよう、私の経験をお伝えしていければと思います。

違和感を覚え始めた1歳過ぎ

息子の成長や様子に違和感を覚えたのは息子が1歳を過ぎたあたりでした。はじめはなんとなく独特?という程度の違和感でしたが、毎日接しているなかで、その違和感は発達障害ではないかという疑いに変わりました。

健康に生まれてきた息子の成長に不安を感じることにはじめは抵抗があり、認めたくない気持ちもあって、なかなかその違和感に向き合うこともできませんでした。

しかし、周りの同じ月齢の子と比べて見ることが増えていき、その違いを否定することはできなくなっていき、自分の気持ちが追い付かずに苦しかったです。夫にその違和感について話してみても、息子しか見ていない夫は「そんなもんでしょ」という感じで能天気な返事。

実家から離れて住んでいたこともあり、平日のワンオペで息子とのやりとりに悩む日々、相談する先も分からず、悩む日々は続きました。

私が息子に感じた具体的な「違和感」は以下のようなところです。これは一般的に検索などをして出てくる「発達障害の特徴」ではなく、あくまで私の見た息子の他の子との違いです。

目線が合わない

息子が私に向かって何か伝えようとしている時、向かい合って何か一緒に遊んでいる時、目線が合っていないように感じました。お友だちは真っすぐに母親の目を見ているのに対し、息子はいつも私が持っている物や私の手など、私の目ではない「何か」に集中していることが多かったのです。

これは母親である「私」に興味があるのではなく、私の持つ「物」や動いている手などの「動き」に息子の興味が引かれていたということでした。

気が逸れない

何か要求があったり、悲しいことがあって泣いていても「あっ!」と大きな声で何かを指さしてみたりすると、他の子はそちらに注意が行って、気持ちが紛れて泣き止むということがよくありました。

しかし、息子の場合は自分に不満があって泣いていると何をしても自分の不満や悲しい気持ちが消化されるまで気が逸れることがありませんでした。結果、30分でも1時間でも要求が通る、悲しい気持ちが消化されるまでは泣き続けていました。

外でこういった癇癪が起きると外出先でもお出かけを続行させることは難しいほどで、お友だちと遊んでいる時には何度も外に連れ出したことがあります。外に出る度、「何でこの子はこんなに泣き続けるのだろう」と、気持ちをぱっと切り替えて遊び直す他の子をうらやましく思いました。

周りの子から離れる

1歳頃になると他の子の存在を認識して近寄ってみたり、他の子が遊んでいるものに興味を持つ姿が周りの子には見られました。

しかし、息子の場合は「お友だち」に興味を持つどころか、自分に他の子が近寄ってくると逃げて部屋の隅で一人で遊んでいました。

息子が1歳の頃、夫の海外駐在に帯同していたため、お友だちとは誰かの家に集まって遊ぶことが多かったのですが、息子だけはいつも写真に映っておらず、一人の写真ばかりでした。よく遊んだ日にママ同士で写真をシェアしていたのですが、息子の写真はなく、そんなことにも悲しくなっていました。

発達の違い・遅れ

息子はつかまり立ちと伝い歩きまではほぼ目安通りの時期に始めましたが、一人で立ったり、歩こうとしたりしませんでした。

1歳を過ぎてたどたどしい足取りで歩き始める子がいるなか、息子はいつまでもハイハイをしていて、そののんびりさも私はヤキモキしていました。息子にとってはハイハイが移動手段では一番速く、歩く必要性がなかっただけだと今となっては思うのですが、当時の私には歩き始めるのが待ち遠しくて仕方なかったです。

つかまり立ちや伝い歩きはするのですが、行きたい場所があると即座にハイハイをしてしまう息子。歩かせようと無理やり手を取って立ち上がらせては息子を泣かせたこともありました。

1歳4か月を過ぎて、手を繋いでお散歩をしていた時に行きたい場所があり、いきなり手を離して歩き出した時にはびっくりと同時に「やっと歩いてくれた」と成長が追い付いたことへの安心感で涙が出ました。

友だちとの関わりの必要性

子どもの成長に不安を感じていると周りの子との違いを目の当たりにするのが辛くて、だんだんと人と遊ぶことが億劫になっていきました。

心開ける友人に息子の発達への不安や違いを見ることが辛いことを打ち明け、遊ぶ回数を減らし、お出かけはランチのみなど、あまり周りの子の成長を見ることがないよう過ごすようになりました。
息子と2人だけの時間はあまり深く考えずに息子のペースに合わせて過ごせるので、息子が癇癪を起こすことも少なく、私も焦ったり悲しんだりすることがなかったので精神衛生上は無理に友達付き合いを続けるよりも良かったように思います。

きっと自分の子どもの成長に不安を感じたり、悩んだりしている母親でふさぎ込んでしまって当時の私のように家の外に出られなくなっている方もいるのではないでしょうか。無理に外に出ては帰ってきてから悲しい気持ちになったり、疲れ果ててしまうくらいなら、お友だちとの距離をとってみることも母子にとっては必要ではないかと思います。

実際私は、周りの子が歩き始めた頃から息子が歩き始めるまでの2か月ほど、ほとんどまともに他の親子とは会わずに日中を息子と二人で過ごしていました。

しかし、そんな時期を過ごした後で、息子が歩き始めてようやく人に会える気持ちになってから、再びよく友だちと会うようになって「人と会うことも大切だったな」と思うようになりました。どんな面で「人と会うことが大切」だったのか、今ふさぎ込んでしまっているお母さんが「人と会おう」と思えるかはわかりませんが、その理由を挙げておきます。

「友だちと比べる必要がない」と母親が思える練習

子どもの成長に不安を感じていると、どうしても周りの子と比べがちになってしまいます。
しかし、得意不得意が誰にでもあるように、子どもの成長は人それぞれ。成長が早ければいいというわけではありません。この事実は頭ではわかっていても、なかなかその違いを目の当たりにするのは母親として辛いところもあります。

けれど、よく考えてみれば、成長の違いを感じることはこれから先、子どもが大きくなればなるほど、その回数は増えていきます。実際、今4歳になる息子は運動能力の面では3歳相当と診断されており、幼稚園の同じクラスの子と比べてもその差は歴然としています。それでも、息子にとってはその「のんびりさ」は一生ついてくる課題であり、付き合っていかないとどうしようもない彼の「個性」です。

これから一生付き合っていくであろう「個性」に対して、赤ちゃんの頃のたった数ヶ月、数週間の違いに一喜一憂していても仕方ないのです。

それよりもその違いを母親が受け止めること、周りの子を見て母親が成長の手助けをしてあげられることの方がよほど有意義だと気づきました。

そんな風に人と会うことに前向きに考えられるようになってからは「〇〇ちゃんはこんなこともできるようになってるのか!じゃあ息子にもこんな風に練習させてあげたらできるかな」と人と会うたびに次の成長の目標を見つけるようになりました。

子どもが周りの子と違うと思うと素直に我が子の成長だけを見ることが難しい時もありますが、乳幼児期の子どもの成長は親との関わりが大きな影響を与えるとも言われています。その時期に母親がまず「人と比べない」ことができることは、育児のうえでプラスになると思います。

第三者が気づく子どもの成長

毎日一緒にいる母親が一番子どものことを理解していることと思います。しかし、毎日一緒に過ごしているからこそ見落としてしまっている子どもの成長もあるのです。

私の場合は、息子の体の動き(運動面)にばかり注目するあまり、息子の他の成長を見逃していました。

ある日、友だちに「紐遠しできてるね、すごい!」と息子を褒められた時にはっとしました。

そういえば息子は一人でずっと紐通しのおもちゃをよく遊んでいて、手先は他の子に比べて器用になっていました。しかし、運動面やコミュニケーション面への不安ばかりが頭にあった私は、そんな息子の成長を見逃していたのです。おもちゃを投げたり、でたらめに叩いたりして遊んでいる子が多いなか、息子は小さめのおもちゃを器用に棚の隙間に詰めていたり、丸いおもちゃを上手に転がして遊んでいました。そんな息子の成長を見逃していたことに反省しました。

他の子の成長を私が気づくように、お友だちのママは息子の成長にも気づき、我が子と比べていたのです。

第三者だからこそ気づく息子の得意な面に気づき、人と会うことの大切さを感じました。

よく発達障害などの精神的な疾患を抱える人は何かに秀でていたりすると耳にすると思います。私は息子に何か秀でたものを求めているわけではありませんが、不得意なことがあっても同じように得意なことがあればと願っています。

その得意なことに気づいてあげられるのは親であるはずですが、それはいい意味で「周りと比べる」ことでしか気づけないのかもしれません。
その気づきの一歩として、第三者と会うことも大切だと思います。

相談は「プロ」にする方がいい

お友だちと遊んだりして子どもの成長について相談し合ったりすることは母親にとって大事な情報交換の場です。気分転換の面でも、人と会うことは大事なことだと思います。

今はネット検索をすればどんな情報でも出てくるため、発達について悩んだ時、私もありとあらゆる情報を検索しては息子の成長や特徴と見比べていました。ですが、情報とにらめっこしているだけでは子どもは成長しませんし、母親もマイナスな方向にばかり物事を考えがちになっていきます。

これから先どういう対応をするべきなのか、どんな解決策があるのか、自分の対応方法を探るために人にはどんどん相談をした方がいいと思います。が、相談をするのは「プロ」にするのがおすすめです。

私が相談したのは療育センター勤務の保育士さんと市の検診の保健師さんと臨床心理士の先生でした。

療育センターの保育士さんとの出会い

上でも述べましたが、息子が1歳の頃は海外に住んでいたため、日本人の帯同者のネットワークで母子が集まる会がよく開かれていました。そのなかで、帯同前に療育センダーで勤務されていた保育士さんとの出会いがありました。

私が息子の成長についての不安を話すと、3歳までは成長の遅れなどを考えないように、とアドバイスされました。

数日、数週間の成長の違いを気にしていた私にとって、「3歳まで」というのは遠い未来の話に思えました。

しかし、3歳までは発達障害などの診断はできず、発達の違いは「個人差」という見方でしかないということを聞き、とりあえず今は発達障害かも?と思い続けることはやめようと考えました。

それまで同じように友達に相談して「考えこまない方がいいよ」と言われても、根拠のないアドバイスに「理解してもらえてない」と余計に落ち込むばかりでした。同じ「考えこまない方がいい」という内容のアドバイスでも、その根拠があるかないかだけで受け取り方は全く違ったのです。

1歳半検診での発達検査で見えたこと

保育士さんの言葉で発達についてマイナスなことを考えるのはやめようと思えましたが、息子の特徴についてはしっかり受け止め、手助けしていきたいと考えていました。

息子の1歳半検診では担当の保健師さんに息子に対して感じる違和感や育てにくさなどについてしっかり相談しました。フォローアップで臨床心理士の先生による発達検査を受ける流れになり、そこでも息子が他の子と違うと感じるところを話しました。

結果的に、私が感じていた息子の成長への不安は発達のアンバランスさが認められ、「よく気づいて対処してきましたね」と先生から言われ、私が感じてきた悲しい気持ちやもどかしかった気持ちを理解してもらえたようで安心することができました。おそらく、同じように子どもの成長に不安を感じる母親はあれこれと試行錯誤して育児に向き合ってきているはずで、先生はそれを分かっていたのだと思います。

その時の発達検査後のアドバイスでは「母子のふれあいを増やすこと」を大事にするよう言われました。息子の場合、コミュニケーション能力にも少し不安があったため、まずは一番身近である母親とのコミュニケーション、信頼関係の構築が大切だということでした。

このアドバイスは母親として息子へのふれあいが不足していたと言われたようで少しショックでもありました。

しかし、息子のコミュニケーション能力を高めるにはまず私が頑張らないと、と気持ちが引き締まった言葉でもあります。運動能力を伸ばすにも、母親への信頼関係が構築されて「母親ともっと遊びたい」という気持ちが湧くことで「同じ動きをしてみよう」と刺激になるのだと言われました。

運動とコミュニケーション能力が実はどちらも母親との信頼関係が強くなることで向上されるというのは、育児経験がない私には全く想像もつかないことでした。母親だからといって、子どもへの接し方やサポートがいつでも分かっているわけではないのです。

そして、どうすればいいか分からない時には「プロ」に相談することで対処のヒントが見つかり、対処方法も見えてくるはずです。

療育への考え方

発達に遅れがあったり、個性が強い子どもを持つ母親は「療育」に通うべきかどうか、と悩むと思います。私は1歳半検診の発達検査を受けてから、2歳にもう一度検査をしてみて、その結果次第で市の運営する発達支援の教室への入室を相談しましょうと言われました。

療育への抵抗が全くなかったかと言われれば、少しは抵抗も感じました。療育に通うとなると「発達障害」が現実に思えてきて、やはり息子が「発達障害」となることには抵抗があったのです。

しかし、実際の療育というのは「発達の支援・サポート」だということをまずは忘れてはいけません。子どもの成長を「プロ」のもとで一緒にサポートできるか、一人でサポートしていくのか、この違いは幼少期の子どもにはとても大きいものです。

今は、療育は早ければ早いほどいいと言われています。適切な療育を受けていれば発達障害の傾向がある子どもでも苦手を克服していくことができるとも言われました。

自分の子どもにどんなふうに成長してほしいか。親であれば、できれば「普通の子」であってほしいと思うのではないでしょうか。

発達に遅れを感じていると「普通」であることの難しさを痛感すると思います。ですが、その遅れは幼少期の母親の接し方、育て方でサポートしてあげることができるというのが療育教室の先生の考え方でした。

結果的に息子は2歳半から療育教室に通うことになりましたが、通い始める時には私の「療育」への抵抗は全くなくなっていました。

子どもの成長を素直に楽しんでほしい

子どもの成長に不安を感じているとマイナスなことにばかり目が行きがちです。しかし、子どもの成長は必ずしもきれいな階段状にあるわけではありません。

何が得意不得意、どんな仕事が向いているという違いが大人になってもあるように、子どもにも違いがあることを理解して子どもの違いをマイナスに受け取ることはやめておきましょう。

息子の成長に悩み始めた1歳頃から3歳までの間、いろいろな葛藤や悲しい気持ちがありました。しかし、最終的には息子との時間はどれもキラキラした素敵な時間で、成長が待ち遠しかった分、成長した姿を見た時の喜びも大きかったです。

子どもの発達に悩むお母さんがこのお話を読んで、まずは子どもとの時間を悩むより楽しむことに気持ちをフォーカスできるようになればと思います。我が子は必ず成長します。その姿を楽しみに、不出来な部分も「その子らしさ」と捉えて、成長を純粋に楽しんで過ごしてください。

2. 療育教室で学んだ子との接し方

息子が療育に通い始めたのは、私の二人目の妊娠・出産時期が重なったこともあり、息子が2歳6か月になった頃です。
療育に通って学んだことはそれまでの育児への考え方や息子への対応を大きく変えてくれました。

先に知ってほしいのは、これから子どもが療育教室に通う予定または現在通っている親がどういう心構えで子どもを教室に通わせるか、です。

息子の通った療育教室は「親子教室」と名付けられていました。
それは、発達に問題を抱えている子とその親が一緒に問題を解決していけるように、一緒に成長していけるように、親も学び成長しなければならないという理由からです。

教室に通わせたから大丈夫ではなく、教室で子どもの問題点とその対応をプロと一緒に見直していくことで親から子への接し方が変わり、その結果として子どもの発達にも繋がります。
私自身、日々悩んでいた接し方や困難点を教室に通うことでヒントを得られ、息子との関わり方が変わりました。

今もまだまだ成長過程にある息子に対して療育教室で学んだことは日々生かされています。

信頼関係の深さが発達に繋がる

私が抱えていた息子の発達の問題点として、周りの子と同じ遊び方をしない、一緒に遊ぼうとしない、ということがありました。
周りの子が遊んでいても無視、自分なりの遊び方を続行する息子に、いつも周りの子と一緒に遊んでほしくてヤキモキすることばかりでした。

おもちゃの遊び方でも、こちらの手本には目もくれず、自分流の遊び方を続ける息子。
1歳半検診の前には積み木を何度練習させようとも一切積み上げずにばら撒いて並べる息子にイライラしていたこともありました。

きっとそんな気持ちは息子にも届いていたのかな、と今となってはすごく反省しています。

子どものやりたいことに目を向ける

まず、他の子と同じ遊び方をしていないことをマイナスと捉えないことが前提です。
発達に問題を感じていると「周りと同じことをできるように」と考えがちになります。

しかし、子ども自身には発達の「遅れ」や「問題」のせいではなく、自分のやりたいことがあることを理解してあげましょうと先生から教わりました。

言われてみれば、それまでの私は息子にどんな発達をしてほしいか、どんなことをできるようになってほしいか、周りの子と比べて目標になる遊び方を中心に考えていました。
息子のやりたいことに目を向けてあげられてなかったのです。

療育教室で勧められたのは、目的地のない散策です。
子どもの行きたい方向に歩いていく、ただそれだけのことですが、息子と実践してみるといつも以上に喜んで周りの景色を楽しみながら歩いていました。

「子どものやりたいことに目を向ける」
息子のことを誰より理解しているつもりでいましたが、息子のやりたいことを見ることはできていなかったのだな、と反省しました。

信頼関係を築くことの重要性

親子の信頼関係と子どもの発達が関係していると言われるといまいちピンとこないかもしれません。
子どもは大人の見よう見まねで成長していきます。それは自分の信頼する人と同じことをしてみたいという気持ちから来る発達段階とも言えます。

療育教室では、まず子どもの遊びに付き合うこと(子どものやりたいことに目を向ける)の後に、大人の遊び方に子どもを巻き込む流れで進行されていました。子どもが自分を見ていてくれる安心感、自分と同じ遊びを共有してくれる楽しさから、反対に大人から遊びを提案された時に、興味を持ち始めるようになります。

母子の信頼関係が構築されていけばいくほど、子どもは母親と過ごすことの安心感や一緒に遊ぶ楽しさを覚えていきます。
結果的にそれが子どもへの成長につながるのです。

実際、1年通った療育教室で、手遊び歌やダンスなどの集団行動の時、子どもは母親に向かって踊ったり歌ったりしている姿がよく見られました。
これも信頼関係の現れだと言えるでしょう。

「見通し」を持たせてあげる

発達障害の傾向の強い子どもには習慣がある方が「見通し」が持てて、気持ちが切り替えやすくなります。
教室内の友人が「今日はいいけど、明日はだめ」という注意をしないように気を付けていると言っていました。

たとえば、今日は遅くまで公園で遊べるけど明日は遊べない。スーパーで今日はお菓子を買ってもいいけど明日はだめ。
こういった親の都合による変化でも子どもは混乱し、癇癪を起します。

療育教室に通っている子どもはやはり「癇癪がひどい」という悩みを抱えている母親が多く、いかに癇癪を起さずに毎日を過ごせるか、に注力していました。

大事なのは「見通し」が持てる習慣づけです。

朝は何時に起きる、着替えと朝食、午前中の予定、昼食、どんな小さなことまでも毎日の習慣になっていると子どもは「次何をするか、今はどんな時間か」が分かるようになってきます。
習慣づけをしてしまうと、例外のある日は大変にもなりますが、事前に知らせておくことで混乱を防ぐこともできます。

「見通し」の持てる流れ

療育教室では毎回、着いたら自由に室内遊びから始まり、お片付け、お茶休憩、手遊び…などだいたいの流れが決まっていました。
設定遊びとして毎回取り入れられている砂遊び、粘土遊び、水遊びなどは1ヶ月(4回)単位で変わりましたが、それ以外の内容は1年間ほぼ変わらずでした。

すると、週に1回でも「見通し」が持てるようになり、「次はこれ!」と子どもから次の遊びを催促してきてくれるようになります。はじめのうちは「もっと今の遊びをしたい」と駄々をこねていたこともありましたが、次第に流れに沿って楽しめるようになっていきました。

「気が逸れない」悩みへのアプローチ

前章でも述べていますが、息子は一度癇癪を起こしてしまうと、どんなになだめても泣き続けていました。外出先で一度機嫌を損ねてしまうとその場で泣き出して手が付けられなくなります。

「遊びたい」と駄々をこねている時には、「お菓子をあげる」とあやしてみても全く効果がなく、息子が2歳の頃、お気に入りの公園に行きたがるのも帰りに泣かれるのが怖くて公園に行かない日々が続くこともありました。

見通しを持たせることを知ってからは「この遊びとこの遊びをしたら今日は帰ろうね」とあらかじめ遊びの予定を立てて遊ぶようになりました。すると帰りに泣かずに帰れる日が増え、また次遊びに行く日には「今日はこれ!」と自分から遊びの計画を立てはじめました。

息子が幼稚園に通い始めてからも「見通し」を持てるように、とはじめの1か月ほどは同じ遊びの繰り返しだったようです。

どんな発達過程でも大事にされているほど、「見通し」は子どもにとって大きなものだということでしょう。
今でもその日の予定などを朝話して、一日の見通しが持てるように意識しています。

手先は飛び出た大脳?

手先の感覚遊びは、決して指先の器用さを鍛えているわけではありません。

療育教室の先生は感覚遊びのたびに、「手先は飛び出た大脳だからね~」とよく言っていました。
指先への刺激が脳に伝わって、脳が発達するそうです。

一般的によく聞く知育遊びは検索して試したりしていましたが、それまではあまり気にしていなかった指先への感覚が子どもの脳の発達に大事なのだと初めて知りました。

感覚遊びは水、砂、粘土など日常で取り入れやすい遊び方ですし、水遊びが大好きな息子にはそれまで以上にお風呂でたっぷり遊ばせてあげるようにしました。シャワーから出てくるお湯にひたすら手を出している姿を見ては「脳発達してるかな」と微笑ましくなりました。

親がしてあげられる発達支援というのは、専門的な知識を持って準備していないと難しいことも多いです。
けれど、指先への感覚遊びは日常で親が与えてあげられる支援としては一番取り入れやすいものではないかと思います。

グレーゾーンの子どもと接すること

親が子どもにしてあげられることは非常に少なく、子どもの発達を信じ、待つしかない時もあります。特に発達障害の傾向があったり、個性が強い子どもを見ていると、周りと比べて落ち込むこともありますし、子どもに悩まされることも多々出てきます。

療育教室の懇談会では、発達に悩みのある子を持つ母親同士、苦労したことや悩んでいること、悲しい気持ちを共有する機会がありました。誰もが自分の育児のやり方を責めたり、これから先に不安を感じていたり、現在進行形で悩み苦しんでいました。

私も息子の成長に不安を感じてから、自分の接し方がダメだったんじゃないかと何度も自問自答しては自責の念に駆られ、悩まない日なんてないほどでした。
療育教室に通うようになってからは、今までの接し方でいけなかったところなどが浮き彫りになっていき、さらに自己嫌悪に陥っていった時期もあります。

療育教室の先生は「今までよくやってきた」と自分をほめてあげてください、とよく言っていました。悩みを相談した時でも、「よく悩んで話してくれたね」と。
毎日個性の強い子どもと一緒に過ごして、発達のサポートと日々の子守、何もかもを母親がカバーすることはできません。
ましてや、少しのことで癇癪を起こして収まりがつかなくなったり、お出かけさえもままならなかったりする毎日です。

辛い日々を乗り越えようとしてきたことを認め、自分を母親として褒めてあげることもグレーゾーンの子どもを持つ母親には必要ではないでしょうか。

育児はいくらでも挽回できる

私はよく「こういった接し方ができていなかった」と反省点を先生に伝えていました。
しかし、反省していても子どもの発達にいい影響が出るわけではありません。

先生は「これから挽回できるから、遅すぎることなんてない」と言われていました。
確かに、療育教室に通ってから初めて意識した息子の目線になって考えることや感覚遊びを取り入れた遊びなど、今まで深く考えてあげられてなかったことをやり直していって、結局今は他の子と変わらない成長をした息子がいます。

息子の目線に立ててあげられていないことに療育教室で気づいてあげられてなかったら?
「見通し」を持たせることをいまだにできていなかったら?

もっと長く苦しい日々を息子と過ごしていたかもしれません。

療育教室で学び、そこから挽回した結果、今の息子は見通しさえあれば癇癪を起こしません。
やりたいことに私が理解を示してあげれば、こちらの遊び方のリクエストにも付き合ってくれます。

前にも述べた通り、発達に悩みを抱える子どもを見ていると母親として「できていなかった」ことに目を向けて落ち込んでしまうこともあると思います。
しかし、この先どんな風に挽回できるかを考えて、解決策を模索した方がよほど発達には有益です。

母親が笑顔で過ごすことが大事

「お母さんが笑ってるのが子どもちゃんは一番幸せですよ」
療育教室の初めての懇談会で先生がおっしゃった一言です。

それまでの苦悩や悲しみを一人一人が泣きながら話した懇談会の最後に、悲しい気持ちは一度蓋をして子どものお迎えに行きましょうと言われました。

子どもは思っている以上に母親の様子を見ています。息子は私に興味がないから、と知らず知らずのうちに笑顔で接することができていなかったように思います。

母親が笑顔で子どもの視界に入ることが子どもに安心感を与えます。
これは結果的に子どもとの信頼関係に繋がりますし、母親自身、笑顔で過ごした方が「子どもといるのが楽しい」と育児に前向きでいられます。

悩むことが多いと純粋に笑顔で接してあげることができない時もあるかもしれません。
しかし、笑顔で接することを意識してからは息子がこんなに自分の顔色を見ていたのかとびっくりするほど、息子は私の顔を見ていました。

笑顔ができないほどに悲しい気持ちになったり、腹立たしい日ももちろんまだまだあります。
けれど、その日の終わりには全ての感情に蓋をして、息子と向き合って笑顔で「おやすみ」を言い合います。
明日も私との時間を楽しみに思ってくれますように、と願うのです。

療育教室で学んだことは細かなことを挙げればキリがないほど、たくさんあります。
4歳を超えてもいまだに息子と私の関係には療育教室で学んだことが生かされています。

今もし療育教室に通うことに抵抗を感じていたり、通うことが決まってまた新たに悩みを抱えていたりするのであれば、「自分が育児を学べる場」に行くのだと切り替えて考えてみてください。
療育教室で学ぶことは子どもの発達に問題があるなしに関わらず、子どもの発達を母親がサポートする方法を知ることができる場所だからです。

3. お家でできた母子の知育遊び

「知育遊び」は子どもの成長・発達を考えた時によく耳にする言葉だと思います。
息子の成長に疑問を感じ始めた頃から、発達についてインターネットで調べるとたくさんの知育遊びについての記事を目にし、2歳半から3歳の頃に「知育遊びをさせないと!」と思うようになりました。

知育遊びといえば、パズル、積み木、絵本、粘土といった昔ながらのおもちゃを使った遊び方のイメージがなんとなくありませんか?

シンプルなおもちゃの方が遊びの幅が広げられたり、集中力や自分で考える能力が養われていくそうです。「知育玩具」という名前がついているおもちゃは確かに、シンプルで子どもが考えて遊ぶことのできるおもちゃが多いですよね。

ここでは私が息子と実践してきた知育遊びについて、その考え方も含めて思い起こしていきます。

知育遊びは必要か?

知育遊びというのは、子どもの「知育」を発達させていく手助けになるものです。
その意味では、知育遊びはどんな子どもにも必要であり、おもちゃの選び方や日々の遊び方で親がサポートしてあげることも大切だと思います。

しかし、知育が発達したからといって、子どもの困りごとが解消されるわけでもなければ、著しく成長するとも限りません。

「知育」は体育・徳育と合わせて三育と呼ばれるものの一つで、子どもの成長はこの三つの要素がバランスよく発達しているのが理想ではないかと思います。
反対にアンバランスな成長をすることによって、不得意なことができてしまうということです。
現に息子の場合は、この三育のなかで体育の発達がゆっくりで、知育においても検査上はアンバランスさが出ていました。

知育遊びに焦点を当てた理由

三育をサポートするのが一番いいとは思いつつ、私が特に知育にこだわったのは、息子の将来を考えたからです。

2歳半から3歳頃の息子の様子を見ていると、「人の話を聞いてない」と感じることが多く出てきました。
療育教室で先生が子どもたちに遊びが終わりと呼びかけをすると、教室に慣れてきた頃には、子どもたちは先生の言葉を聞いて遊びを終了させるようになっていました。しかし、息子は先生の言葉には耳を傾けることなく、私が「終わりだよ」と声をかけるまで遊んでいました。
集中してしまうことで周りの声が聞こえなかったり、自分に話されているとは思っていなかったりということだったのだと思います。

そんな息子を見ていて、将来息子が学校に通うようになり、やがて大人になったらどうだろうかと心配が募りました。

人とのコミュニケーションが元来、不得意である息子にとって、人の話を聞くことが必ずしもできない時もあるだろう。
人とコミュニケーションがうまくとれなかったら困ることもきっと出てくるだろう。

そう心配した時に、息子が一人で考え、やりぬく力を持っていることで、問題が発生しても自分で解決できるようになっていればいいか、と考えました。
そういった考えから家で遊ぶ時間に知育遊びを意識して取り入れるようになりました。

知育遊びをしない息子

知育遊びを取り入れよう!と思い立っても、母の思いとは裏腹に、プラレールと車に夢中だった息子は、毎日時間が許す限り、プラレールと車のおもちゃで遊んでいました。
積み木やブロックを出してみても、「今さら?」と言った感じですぐにプラレールに戻っていきます。

お絵描きをしてみても、でたらめな線しか描かず、お絵描きの好きなお友だちとまるで同じ年とは思えないような出来でした。

パズルも試しましたが、集中どころかバラバラにして、全く興味を示しませんでしたし、絵本も1歳半頃からあまり読まず、やはりなかなか一緒に読んではくれませんでした。

3歳を迎える頃には自分でやりたい遊びを主張できるし、自分のリクエストを聞いて欲しい気持ちもかなり強くなっていた息子。
こちらが提案する遊びが自分の意にそぐわず、怒ってしまったり、拗ねてしまうこともありました。

知育遊びの環境づくり

子どもは基本的に刺激のあるものを好むこともあり、おもちゃが家に溢れているとそちらにどうしても気が向いてしまいます。
そこで私はまず、おもちゃを減らすことから始めました。

プラレールのコースは毎週末夫と息子が作り、1週間同じコースで遊んでいたのですが、週末に大掛かりなコースを作るのみで、平日はシンプルな構成のものに組み替えました。
シンプルにすることで、ただ電車走らせるだけでなく、自分でトンネルや橋を追加できるという幅を広げるためです。

また、電子音が流れるおもちゃが我が家には多かったのですが、それらも今週遊ぶのはどれにしようか?と相談し、一週間ごとにおもちゃを入れ替えるようにしました。
限られたおもちゃの中で多様な遊び方を探すことも彼の「自分で考える力」を育ててくれると考えたのです。

出しておくおもちゃを限定した代わりに、今まで棚に整理しておいたお絵描きセットや粘土、積み木を手の届く範囲に置くようにしました。

こうした環境づくりは日々の生活の中で忘れがちでしたが、今まで以上に出されているおもちゃを駆使して遊ぶようになった息子を見て、環境の見直しを怠っていたことを反省しました。

実践できた知育遊び

環境づくりまでできたものの、息子はそれでも積み木に集中したり、お絵描きを進んですることはありませんでした。

療育教室の先生に遊び方について相談し、息子の興味を引き出しやすそうな遊びについて、遊び方のアドバイスをもらいました。

息子が実際に好きになり遊ぶようになったのはお絵描き、マグネット、粘土です。
ここではそれぞれの遊び方の変化を振り返ってみます。

アプローチ① お絵描き

もともと息子はお絵描きをしても線をでたらめに描くだけで、「お絵描き」になっていませんでした。

〇クレヨンで描く感触を味わっている段階だから、線を好きなだけ描かせてあげる。
〇よく市販されているお絵描き帳などのサイズでなく、大きな紙に描かせてみる
〇いろんな画材(クレヨン・ペン・鉛筆)で描かせてあげる。

これらのことを療育教室の先生にアドバイスされました。
いきなり「お絵描き」をさせるのでなく、まず感触遊びとして描くことからスタートし、絵を描くことに興味を持たせることを意識しました。

大きなロール紙を購入し、1mほどの長さに広げて、クレヨンとペン、色鉛筆を用意しました。
息子が描く線を真似してみたり、線上に息子の好きな車や新幹線の絵を描いてみたりしました。

それまでの息子はお絵描きをしてもものの数分で飽きていたのが、自分の描いた線の上に車が描かれたり、動物が出てきたことで、自分の絵に興味を持ち始めました。
3歳前から始めたお絵描き遊びですが、4歳になる頃には人を描いたり、動物を描いたり、自分の好きなアニメのキャラクターを描くようになりました。

アプローチ② マグネット

マグネットの知育玩具は2歳前に祖父が購入し持っていたのですが、対象年齢でなかったこともありまだ遊ばせていませんでした。
知育に力を入れようと考えた時に積み木でなく、マグネット遊びを取り入れることにしました。

平面でくっつける、電車の形にしてみる、ぶらさげてみる、といった遊びからスタートさせました。
いつでも電車や車であれば興味を示したので、そこに繋げるようにしていくことで、息子もより集中していたように思います。

平面で並べることを覚えてからは、おうちの形にしてみたり、車を作ってみたり、お花にしてみたり、とどんどん平面でできる複雑な形を見せていきました。
「これ作って」とリクエストしてきて、自分でなかなか作ろうとしない息子にイライラしてしまうことが増えていき、また先生に相談しました。

先生からのアドバイスは、3歳頃になると、人の真似をすることに楽しさを覚えるようになるので、「真似すれば達成できる遊び」を見せてあげるといい、とのことでした。

それまで作っていた図形より少し簡単なものを繰り返し息子に作って見せ、「真似したい、自分もしたい」と思う時が来るのを待ち続けました。
お友だちと遊んでみると、初めてマグネットで遊んだにもかかわらす、自分で思い思いの形を作ろうとするお友だちを見て、焦りを感じることもあり、自分に「比べる必要はない」と言い聞かせていました。

結果的に、今4歳の息子はマグネットしようかと誘うと、自分で大きな車や付属されていた作り方のお手本を見て様々な立体を真似して作っています。

動物や車のおもちゃと一緒にマグネットでお家や駐車場を作ったり、こちらも驚くような組み合わせで遊ぶこともあります。
マグネットを始めた頃は平面の図形すら真似せず、「できない」と癇癪を起こしていたので、どの知育遊びよりも一番成長を感じます。

アプローチ③粘土

粘土遊びでも、まずは息子の少し頑張れば達成できる遊びを意識して取り入れていきました。
2歳を過ぎた頃から粘土遊びはしていて、息子も比較的気に入って遊んでいたのですが、やはり自発的に何かを作ろうとしたりはしませんでした。

息子にとっては「何かを作る」ことよりも、細くしてみる、細かくしてみるといった作業的なことが楽しかったようです。
何度も丸めて細くして、細かく切って、を繰り返して遊んでいました。

こちらが何かの形にしてみても、なかなか興味を示さず、型抜きなども3歳の息子は「自分ができないからやりたくない」という感じでした。
ただ、細くする、細かくする、薄く延ばす、といったことは何度やっていても楽しそうだったので、そちらからどういった遊びに広げられるかを考えてみました。

細く伸ばしたのをうどんに見立てて、うどんを作る、細かく切ったのはご飯、丸めておにぎりにしてみる、薄く延ばしたのは卵焼きにしてみる、といった感じでお料理に見立てると、自分が手を加えたものが形になることが嬉しかったようです。
それまで何かを作ろうとしていなかったのに、自分から食べ物に見立てて遊ぶようになりました。

4歳の今の息子は、粘土となるとお弁当やお団子を作ったり、かたつむりなど、単純な形のものを自分で作るようになりました。
幼稚園ではパン屋さんをして粘土遊びをしたようで、「上手にパンを作ってくれました」と渦巻の形をしたパンを幼稚園の先生は見せてくれました。

知育遊びに対する心構え

上でも述べたように、息子はなかなか「知育遊び」に没頭することはなく、おもちゃが大好きです。
今でも自分から知育系の遊びをしたがることはなく、一人遊びでは特におもちゃばかりで遊びます。

しかし、私と遊ぶとなると知育遊びを自分から提案してきてくれるようになりました。
息子にとって「知育遊び=母親と遊ぶもの」になっているのでしょう。

息子が「こんなことをしたいのにうまくいかない」、そんな時にどんなサポートをしてあげられるかが、息子にとって知育遊びを楽しめるかどうかの鍵だったように思います。

自力で考える力を育てるために知育遊びを中心に取り入れようとしたとき、自分がどんな風に息子にアプローチしてあげればいいのかを私は分かっていませんでした。
きっと知育遊びを上手にしてあげられるお母さんは、子どもの発達や特性を理解し、遊び方が上手なのだと思います。

インターネットで知育遊びのことを調べていると、私と同じように知育遊びをしてくれないお子さんへの悩みを吐露されている母親の書き込みもありました。

知育遊びを子どもにさせようと考えると、子どもに遊ばせよう、集中させよう、自発的にさせようと考えてしまいがちです。
しかし、子どもが知育遊びでどんな成長をしていけるかは親のサポートで土台を作ってあげることがスタートなのだと思います。

遊びの幅を広げる工夫

マグネットのところでも書いていましたが、息子はマグネットで作った車に動物を乗せたり、マグネットのお家に動物やミニカーを入れたりします。
お絵描きでは、駐車場を作ったり道路を描いたりして、紙の上に車や電車を走らせます。

粘土では作ったお料理を動物に食べさせます。

同じ遊び方を繰り返していますが、家の形がだんだん複雑になっていったり、車が大きくなっていったり、粘土も作るお料理のレパートリーが広がっていっています。
遊びの幅が広がっていくことで、息子にとっては「大好きなおもちゃ」と「頑張ってする遊び」のバランスができてきました。

知育遊びをしようとすると「知育玩具」にこだわってしまったり、知的な遊びを子どもに求めてしまいがちです。
しかし、あくまで「遊び」ですから、子どもが楽しめることが一番。

知育遊びにこだわらずに、子どもがどんな遊び方をしたいかにまずは目を向けること。
そこから子どもにどんな発達を促してあげられるかが見えてくると思います。

理解する力を母親が持つ必要

知育遊びをしていると子どもの成長を感じることが多い一方で、成長の姿が見られないと「どうサポートしようか」と悩むことも多くなります。

しかし、親が覚えておきたいのは「子どもの成長は行きつ戻りつ」ということ。

ある日できるようになったかと思えば、次に日からは同じことを全くしなくなった、なんてこともあります。
始めて寝返りをした赤ちゃんが、次に日からはしなくなった、なんて話もよく聞きますよね。

エネルギーを出し切ったトライをした後は、充電期間が必要なのかもしれません。
あるいは、できないと思っていたことができるようになってみれば、自分には必要なかったことだったのかもしれません。

「こないだはこんな風に遊べていたのに、今日はまた遊び方に進歩がなくなった」

そんな日も、知育遊びをしているときっと出てきます。

そういった時に、子どものやりたいことに目を向け、理解してあげること。
一緒に子どものペースに立ち戻ってあげることが、知育遊びでは必要なのかもしれません。

息子の場合はコミュニケーション能力への不安から、自分で解決する力をつけようと知育遊びに焦点をあててきましたが、理解する力を母親が持つことは子どもの発達のどんな場面でも大切です。
「自分を理解してくれている」と思えることが自己肯定感にも繋がりますし、親子の信頼関係をより深めていきます。

発達に不安があったり、知育遊びの取り入れ方に悩んでいるお母さんがいれば、子どもの目線に立って遊んでみる、考えてみることを意識してみてください。

4. 発達障害か個性かは親の捉え方次第

子どもが発達に問題を抱えていると、検診、発達検査や療育教室に向かう度に「発達障害かもしれない」という気持ちを感じざるを得ません。
我が子の成長を近くで見ている親にとって「発達障害かもしれない」という気持ちはあまり歓迎できるものではなく、直面すると辛くなったり、不安になったりするでしょう。

実際に発達障害かどうかが分かるのは一般的には3歳以降と言われ、それまでは発達障害の疑いがあっても「グレーゾーン」で過ごすことになっていきます。
どっちつかずの時期は子どもへの対応に困ることもありますし、自分自身の気持ちの折り合いのつけ方に悩むことも多いのではないでしょうか。

現在4歳の息子は、市のフォローアップの検診を年に1回受診していますが、基本的には発達障害という特性はないとされています。
3歳半まで療育の親子教室に通っていましたが、結果的には個性の範囲ということで通常の幼稚園に通園しています。

3歳児検診を受ける前や幼稚園選びが始まる頃に悩んだ気持ち、その時の対応について振り返っていきたいと思います。
この記事を読んで、今我が子がグレーゾーンでこれから先のことに不安を抱えているお母さんに少しでも気持ちのフォローができれば幸いです。

発達検査の結果の受け止め方

息子は1歳半検診、2歳になってからの経過観察、療育教室に入室してから(2歳8か月頃)と3歳児検診までに3回の発達検査を受けていました。
どの段階でも息子のペースで発達はしているものの、苦手な項目ももちろんあり、「まだ追い付けていないか」と検査のたびに悲しくなったり、焦ったりしたのを覚えています。

ある時、療育教室のお母さんと話していると「発達検査なんて意味あるんですかね」と言われました。
彼女の考えは「できないことが検査で分かったところで、実生活にどう影響を及ぼすのか関係が分からない」「検査だということも分かっていない子どもに受けさせたところで、興味の度合いで結果なんて変わるだろう」ということでした。

実際に彼女はお子さんとの生活で困りごとを感じる場面がなく、お子さんに「遅れている」と思うこともないと言われていました。
しかし実際彼女のお子さんは発達検査で著しく苦手な領域があり、1歳半の頃から検査で引っかかって、療育教室に通っていました。

一方で私は発達検査がある度に息子がどんな発達をしているだろうかと楽しみ半分、まだ追い付けていないのはどんなところだろうかと不安半分で過ごしていました。
実際には「要観察」程度で、療育教室や経過観察は強制でなく、私の希望もありました。

そんな私にとって彼女の「たかが発達検査」と言わんばかりの発言と考え方の違いに驚きました。
発達検査に構えてしまっている時には、「たかが検査」という気持ちも必要なのかもしれないと思うようになりました。

彼女の言葉で、それまで息子に対して私はプレッシャーをかけてしまっていたのかもと気づき、考え直す機会になりました。

発達障害と思い込む危険性

「たかが検査」という言葉を何度も考え直していると、息子の日頃の「良い部分」は検査では現れないし、そういう部分を私も見逃してしまっていたのではと感じました。

息子はお世話するのが好きで、ぬいぐるみのお世話や妹のお世話を進んでしてくれました。
お手伝いも進んでしてくれて、好き嫌いなくご飯も喜んで食べてくれます。

おもちゃの取り合いになっても譲る、順番に使うことが2歳半頃からできていましたし、滑り台などの順番もぐずついたりせず並ぶことができました。
泣いている子がいたら心配しておもちゃを渡しに行ったり、よしよしと撫でてあげられる優しさも息子にはありました。

こういった息子の優しい性格やルールを守れる力は発達検査ではわかりません。

「発達障害かもしれない」と考え込んでしまうと「できない部分」に目が行きがちになり、「できている部分・良い個性」を見逃しがちになってしまいます。
発達障害だからといって、何もかもに困難を抱えたり、人と違うわけではないのです。

グレーゾーンを過ごしているお母さんには、「発達障害かも」という気持ちを持ち続けるのではなく、苦手なところがあってもその子なりの良さや得意なところも同じようにあることに目を向けてほしいと思います。

親の感じ方との答え合わせ

発達検査を受けた時に、息子が思った以上の成長をしていてびっくりしたことがありました。
普段どれだけ誘ってもしてくれない積み木の検査で、今までしたことのない形を見ただけでしっかりと真似できている息子に「いつからそんなことができたの?」と驚かされました。

しかし同じ検査のなかで、「これは息子にはきっとできないだろう」と思っていたら、やはりできなかったという項目もありました。
例えば、息子は耳からの情報だけで指示を聞き取るのが苦手と普段接するなかで感じていたのですが、発達検査でも口頭でやり取りをする設問は他の能力を計る設問よりやはり発達度合いが遅れていました。

反対に息子が得意であろうと思う設問の時には、予想していた通り、年齢と同等の能力かそれ以上の場合もありました。

それぞれの設問をクリアできるか、できないか、自分の予想と合っていたら自分が息子の成長・特性を理解できていたということではないかと思っています。

発達障害ではなかったとしても、個性が強い息子にとって、母親がその特性を理解していることは息子の成長に少なからず影響すると思います。
実際、息子の苦手な耳からの聞き取りを増やすように日々の生活で心がけることができました。
また、得意な分野をさらに伸ばすような遊びややり取りを通して、息子の自己肯定感や自信を高めていくこともできたと思います。

発達検査を受けるのは「子どもの発達を検査する」だけでなく、親が子どもをどれだけ理解できているか、も見ることができるのです。

発達検査を「子どもの発達がどうか」知るだけでなく、親の対応や理解にも目を向ける機会として捉えることも、親と子の関わりや発達のサポートには大事な視点かもしれません。

柔軟な心を持つ必要性

1歳過ぎから息子の様子に違和感を覚え始め、療育教室に通い、先生の話やアドバイスを聞きながら3歳過ぎまで過ごしてきました。
それでも「発達障害かもしれない」という息子の特性は消えることなく、3歳児検診の前には焦りや不安、諦めのような気持ちを感じることが増えました。

実際には通室していた親子教室で3歳になる少し前に、通室していた療育教室で、発達障害の傾向が低く、幼稚園も通常の幼稚園で問題ありませんと先生にアドバイスをされていたこともあり、また検査で引っかかってこれ以上何か特別なフォローをすることはないだろうという余裕も少しはありました。

それでも私が3歳児検診の前に不安を感じていたのはなぜでしょう。

3歳まで「グレーゾーン」でいた息子が3歳児検診でグレーゾーンの子どもでなくなるという確証がなかったからです。
3歳児検診で「発達障害の傾向あり」と診断されなかったとしても、発達検査の結果が全て年齢相応になるとは思えませんでした。

3歳児検診で発達障害かどうか、病院で診断してもらうかどうかが決まる。
そう思っていた私にとって、3歳になっていまだ「グレーゾーン」であろう息子をどう捉えていいのかが分からなかったのです。

個性を伸ばす・苦手を克服する育児

療育教室の先生に、発達障害かどうかの判断のポイントを聞いたことがありました。
不得意な部分があって、困りごととして捉えられ、それが日常生活に支障をきたしているかどうか、で考えたらいいよ、と。

息子の場合は不得意なところが分かりやすく、3歳の時点では周りの子に比べて「遅れている」と感じるだけでした。
日常生活に支障が出ているかどうかと言われれば、簡単な指示でも私が普段使う言葉で話せば指示は通るし、理解もできています。

周りの子と比べても発語が著しく遅い、コミュニケーションがとれていない、ということはあまりありませんでした。
療育教室に通っていることを話すと「何で?」と驚かれることも多々ありました。

そういった見方をすれば、息子は発達障害ではないのでしょう。

そもそも発達障害やグレーゾーンの子に限らず、人には多かれ少なかれ苦手なことってありますよね。
それが自分の得意な部分でカバーできていたり、回避できていれば大人になっても日常で困ることは特にないかと思います。
誰でも、苦手な部分を持ち合わせていて、それをカバーして生きているのです。

息子もこれから耳からの情報を収集・整理することに不得意さを持ち、運動面でも少しのんびり気味なのも変わることはないのだと思います。
それをどうカバーしながら生きていけるか、その手立てを親が教えてあげることができるかどうかが「日常生活に支障をきたすか」に関係してくるのではないでしょうか。

グレーゾーンの子どもだからというだけでなく、そもそも誰もが持つ個性だということを認識して、良い部分を伸ばし、苦手を克服させてあげる育児が子どもには必要なのです。

自己肯定感の育み

苦手を克服させるというのはなかなか親には難しいかもしれません。
私は運動が苦手な息子に少しでも運動能力を高めさせようと公園に連れて行って遊具で遊ぼうとしたり、ボール遊びをさせてみたりしました。

しかし、息子は体を使う遊び方よりお砂場遊びや葉っぱ集めが好きで、こちらの思うような遊び方にはなかなか乗り気になってくれません。

自分で息子の苦手な運動面をサポートするのに限界を感じていた頃、体操教室に通わせようかと考え始めました。
ちょうどその頃に3歳児検診がありましたが、診断された運動発達は3歳8か月時点で3歳0~3ヶ月相当と少し差がありました。

体操教室に通わせるべきか悩んでいることを相談すると、本人が通いたいと言うなら通わせてもいいかもしれないと言われました。
しかし、本人が希望しないのであれば通う必要はないし、むしろ体操教室に通わせることが息子にとってマイナスになる可能性もあるとも言われました。

なぜマイナスになるのでしょうか?

幼少期は自己肯定感を高めさせていく大事な時期であり、「できること」の積み重ねで自分に自信がもてるようになる。
自信があるから他のことに挑戦してみたい気持ちが育っていき、発達が促されていくのです。

反対に「できないこと」が重なると「自分はできない」という気持ちだけが育ち、興味を持てなくなったり、他のことでも自信がなくなってしまう。
このサイクルにはまってしまうと、自己肯定感が育たず、本来伸びるはずの能力も伸びなくなってしまいます。

息子は年齢相当以上に高い理解力を持っていたこともあり、「できないこと」を自分でおそらく理解しているだろう、と。
そんな状態でこのサイクルに当てはめてしまうと、息子は自己肯定感が低い子になってしまうリスクがあります、とのことでした。

言われてみれば、息子は友だちと走っていても、段差があるとぴたっと止まり、慎重に段差を越えたり、自分では登れなさそうな坂は私と手を繋いでしか行きませんでした。

息子は私が思っていた以上に自分を自分で理解し、自分のペースで周りに合わせていく方法をすでに模索し見つけていたのです。

結果的に、息子に運動教室に通いたいか聞いてみると、「英語が習いたい」と言ったので、運動教室はやめて、英会話教室に4歳から通い始めました。
今は日常生活でも英語で習ったフレーズを使って会話してみる姿もあり、英会話の日は幼稚園後に喜んで教室へ向かいます。

どんどん英語力が伸びていく姿に、私も夫も息子を褒めることが増え、その分息子の自己肯定感ややる気がどんどん高められていっているように感じます。
あの時、苦手を克服させるばかりでなく、自己肯定感を高められる選択ができていたことは息子にとっても私たち親にとっても良い結果に繋がりました。

親がどう捉えるかで子どもが変わる

発達障害かもしれないと思うと「障害」という言葉に惑わされ、子どもが直面するであろう壁を想像し、大きな不安を感じると思います。

しかし、発達障害であってもグレーゾーンであっても、全てその子の「個性」です。
個性が人より大きいかどうか、困ることがあるかどうかの違いを「障害」と呼ぶだけであり、本人の個性には変わりありません。

特にグレーゾーンの子は、幼少期の親との関わりで発達がぐんと伸びる時もあります。
実際、息子が好きなことに特化して過ごしていると、どんどん成長していく姿が見られました。

「発達障害かも」と考えすぎて、できない部分にばかりフォーカスしてしまうのは子どもの良い個性を潰してしまいかねません。
「できること」「できないこと」すべてがその子の個性であり、親は個性を個性として、良い方向に伸ばしていく努力をした方が、発達障害を疑って過ごすよりよほど有効でしょう。

そのためには、発達検査でしっかりと結果を受け入れることと発達検査が全てではないこと、どちらの視点も持っている必要があります。
そして、発達検査を受けて子どもにどう親がフォローしていくか、専門知識を持った方としっかり話し合っていくことが何よりの近道です。

全てをマイナスに考えず、グレーゾーンの子がこれから一生抱えていくであろう壁に親も一緒に向き合って、個性の伸ばし方を考えていきましょう。

5. 幼稚園入園までにしたこと

幼稚園はプレに入ることを考えると、入園の1年半から2年前にはすでに選び始めることになります。
発達に問題があってもなくても、子どもにベストな幼稚園に通わせたい気持ちは親にはもちろんあるでしょう。

幼稚園に通い始めてもうすぐ1年を終えようとしている息子ですが、毎日喜んで通っています。
幼稚園選びでは約8か月悩み、入園してからもはじめの2か月ほどは悩むことが多くありました。

今は毎日喜んで通ってくれている姿に心底安心し、また担任の先生から聞く息子の様子に成長を日々感じています。

幼稚園を考え始めた時、入園が近づいてきた時にこの記事を読んで少しでも役立ててもらえたらと思い、息子の幼稚園選びから入園までに親がしたことを振り返っていきます。

幼稚園選びのスタート

幼稚園選びを始める時に、まずつまずいたのが「どんな基準で幼稚園を選ぶか」でした。
評判、園の雰囲気、立地、通園方法、幼稚園を選ぶ基準は人それぞれあると思います。

私の住む地域では公立幼稚園ももちろんありますが、私立の幼稚園も6園ほど通園圏内にあります。
選択肢がある分悩むこともありましたが、息子に合う幼稚園を選ぶことができるといういい面もありました。

幼稚園を選び始めた時にまず考えたのは子どもの特性と適応力です。

子どもの特性を知る

特に発達に問題を抱えていたり、得意・不得意が突出している息子のようなタイプの場合、幼稚園を選び始める段階で子どもの特性を理解していることに越したことはないと思います。

子どもに合うかどうか、はまず子どもの苦手を克服できる環境であるか、得意を伸ばしていける環境かどうかが重要です。
苦手なことを克服もできず強いられている環境では子どもにはストレスがかかるでしょうし、得意なことばかりしていてはその後の小学校生活などで苦手分野に大きく遅れをとることになります。

子どもの特性を知っていることで、幼稚園の特性と合うかどうか、子どもがバランス良く成長していけるかどうかを判断しやすくなります。

私の場合は、療育教室で幼稚園選びの相談ができたため、息子の苦手は何か、克服していける園はどんなところか。反対に、得意な面がより伸びる園はどれか、相談していました。
いつもの印象だけでなく、発達検査の結果から、息子にどんな力をつけさせるべきか、弱点も見直していきました。

子どもの適応力は想像以上

幼稚園を選び始めて悩みだすと、正解も分からずひたすら「幼稚園が合わなかったらどうしよう」とマイナスな思考に陥ってしまうかもしれません。

しかし、子どもは親が思っている以上に適応力があります。
苦手なところが多くても、集団生活のなかで自分なりにうまくカバーする方法を見つけたりするものです。

私自身、幼稚園を選んで通い始めるまで、子どもが楽しんで通園するようになるまでは、選択が正しかったのかと不安な日が続きました。
息子はしっかりと環境に適応し、息子のクラスの園児たちも入園当初と秋頃の姿は見違える成長を遂げています。

仮に正解の園でなかったとしても、子どもがその場所で楽しく過ごせる力を身につけることも子どもにとって必要な成長です。
そしてそんな成長は親がサポートしてあげることもできますし、幼稚園と協力することもできます。

幼稚園と家庭との二本柱のなかで子どもはきっと適応する力をつけていきますから、選んで「合わないかも?」と考えるばかりでなく、適応力を伸ばすサポートを考えることも視野に入れておくといいでしょう。

息子の幼稚園選び

息子の幼稚園選びはプレが始まる年の前年の夏頃からスタートしました。
まずは通園範囲の幼稚園の情報をよく読み、教育方針や過ごし方、保護者への対応や行事などについて調べていきました。

すでに近所には幼稚園に通っているお子さんが多かったのですが、あえて始めから情報を聞いたりはせず、幼稚園への偏見などがない状態で情報だけを取り入れていきました。
「あの子が通ってるならいいかも?」といった感じに、通っているお子さんの様子に惑わされたくなかったのです。

そこから幼稚園を実際に決めるまで、私が重視したポイントがいくつかあります。

幼稚園のタイプについて

私立幼稚園だと幼稚園ごとにカラーが大きく違いますよね。
のびのび、教育重視、宗教色の強い園、少人数など。

まず息子にどのタイプがいいのかを考えました。

小学校入学までに息子には「先生の話を理解する」力をつけさせていきたかったので、はじめの有力候補は教育重視でした。
「座りましょう」「並びましょう」などの基本指示に従って行動できることは、教育の在り方として賛否両論ありますが、小学校以上になるとまだまだ基本の教育スタイルは変わることはないでしょう。
小学生になった時に、先生が言っていることを理解できること、言われた指示に従って行動できるようになっているだけで、息子が小学校に入ってから困ることが少なくなります。

幼稚園の間にいっぱい失敗しておくことで早めに人の話を聴き、理解する力をつけさせることができるのではないかと思いました。

また、教育重視の園だと体育の時間、美術の時間、音楽の時間がきちんと決まっている園もあり、専門の先生がついているところもありました。
そういった園であれば、得意分野をより伸ばし、不得意な分野(息子にとっては主に運動面)の克服にも繋がると考えました。

しかし結果的にはのびのびといて「教育」とは無縁のような園を選ぶことにしました。

息子は4月生まれで理解する力が十分についていたので、「自分ができないこと」をすでに理解できていました。
そんな息子が教育重視の園に行けば、体育の時間には自分だけできないことを感じるだろうし、先生の指示が聞きとれなくて一人置いてきぼりになることで「追い付けない」と悩むだろうと考えたのです。

のびのびと言っても、何もかも自由ではありませんが、もし何かに出遅れたとしても子どもの成長を後押しするスタイルの今の園では、無理に指示に従わせるといったことはありません。
「自分だけできない」という思いを感じることのないよう、子どもの自己肯定感が育まれていくように子どものそれぞれの成長ペースを園の先生は把握してくれています。

どの園のタイプが正解ということはありませんし、どんな力を幼稚園生活で付けさせたいかによっても選択は変わってくるでしょう。

子どもへの対応

幼稚園選びでは、情報を仕入れるだけでなく見学に行くことも大事だと思います。
プレや説明会だけでは日頃の先生たちの子どもへの対応が見えないので、子どもに合わせた対応をしてくれそうかどうか、平日に見学に行くのがおすすめです。

私が実際に見学した幼稚園では、先生が間違えて教室から出てきてしまった子どもにすごく否定的な言葉で叱っていました。
また、子どもの目線に合わせることもなく淡々と立ち上がったままで、ゆっくり話すこともない先生のいる園もありました。

日々の生活の様子を知ると、息子にこんな対応をしてくれるのか、こんな対応をされたら息子はどうだろうと想像がつきやすくなります。

これは見学してみないと分かりませんし、先生の対応はよく見てみないと分かりません。

息子の幼稚園を決めた理由の一つに、先生が否定的な言葉を使う場面、声を荒げる場面が数回の見学で1度もなかったことがあります。
叱られている園児でも、先生は座って子どもの目線に合わせ、手を握る姿もありました。

もちろん、小学校の前段階としてしっかり叱ってくれる園の良さもあると思います。
特に息子のようなグレーゾーンの子どもの場合、はっきり言われないと相手の感情を読み取ることができないこともあります。
前向きな言葉がけばかりがうまく作用するわけではありません。

シンプルさ

息子はどちらかというと、視覚から得る情報を処理するのが得意だったため、園はあえてシンプルな園を選ぶようにしました。
視覚に捕らわれてしまって、注意散漫になりやすかったため、そうなると先生のお話がうまく聞けなかったりしてしまうのではないかと思ったのです。

息子の通う園に初めて見学に行った時、掲示物の少なさ、教室のシンプルさがまず気に入りました。
息子もプレで教室に入った時に、きょろきょろせず先生のお話を聴くことができていました。

反対に、子どもの楽しめそうな環境をぎゅっと詰めたような園では、息子はやはり気が掲示物や部屋の置物などに行ってしまい、全く先生の話を聞いていられませんでした。

さらに、園ではキャラクターものをできるだけ控えるように指導されていて、カバンやお箸ケースなどは基本的にシンプルなものです。
たまにお友だちがキャラクターものを使っていると息子が帰ってきてから必ずお話してきてくれるので、子どもがキャラクターものにどれだけ引き込まれやすいのかがよく分かります。

細かなところまでも、できるだけキャラクターものや派手なものを避けるよう指導されていることで、息子が日々のやるべきことに集中しやすい環境になっているのだろうなと思えます。

入園までの準備期間

幼稚園は入園する前年の9月頃に決めました。
プレの優先枠があったため、わりと早い段階で入園確定していたこともあり、入園までの準備期間をしっかり持つことができました。

幼稚園生活が始まる前に「準備!」と張り切ってしまうと子どもは幼稚園に「頑張らないとだめな場所」と身構えてしまいます。
入園までの準備と言いつつ、私の場合は息子に「幼稚園のため」ではなく、「4歳になる練習」だったり、「お父さんみたいにかっこいいお父さんになる練習」と伝えながら準備していきました。

自分で自分のことをできる

基本的なことですが、服や靴の着替えなどは自分でできるようにしました。
食事も本人がどうしても頑張れない時だけお手伝いしても、基本的には自分で食べることを当たり前になるようにしました。

着替えを自分でさせるようにしたり、食事をサポートなしで食べるのは時間にゆとりがあり、本人のやる気とタイミングが大事なように思います。
息子は父親への憧れが強かったため「お父さんみたいにしてみよう!」という言葉で本人のやる気を引き出しました。

息子の幼稚園では方針で、食事はお箸のみで補助箸の使用も基本的には認められていません。
なかにはお箸の練習に子どもがどうしても気が向かず、お箸を使えないままで「困ることも経験」と練習させていない話も聞いていました。

しかし息子には「自分だけできない」という気持ちは他のところできっと経験するだろうから、最低限、園から言われていることはできるようにしておきました。

困ったことが伝えられる

妹とのやりとりでうまくいかないことがあったり、探し物があるときなど、自分の気持ちや困ったことを言葉で伝えられる練習をしました。
少し頑固なところが強い息子は、気持ちがうまく切り替えられない時がまだまだだくさんありました。
こちらが気持ちに気づかずにいると、お昼の出来事でも夜まで引きずって、夜寝る時になって大泣きして気持ちが収まらないことなどもありました。

気持ちを伝えるように教え、一日の節目で「どんな気持ち?」「この遊びもっとしたい?」など、息子の気持ちを言葉にする、息子が自分で言葉にする練習をしていきました。
「もっと遊びたかった」「これが欲しかった」など、気持ちを伝えられることで何が不満だったのか伝わるし、気持ちの切り替えをうまくできるようになったと思います。

幼稚園でも先生に、自分の気持ちをうまく伝えられていて、お友だちとのトラブルも少ないですと言われています。

母子分離

3歳になってからの息子はまだまだ私から離れることができませんでした。
「幼稚園って何?」とある日聞いてきた息子に、「4歳になる子が行くんだよ」と教えると、自分も4歳になる時には行かないといけないと分かり、大泣きしてしまいました。

母子分離の練習のために、民間で少人数制の預かり保育をされている場所があったので、週に1回そこへ通うようにしました。
半日だけの預かり保育で、外遊びばかりだったので、はじめの3回ほどは付き添いしていましたが、だんだん息子も楽しさに夢中になり、母子分離ができるようになりました。

入園前になると「幼稚園にお母さんなしで行くんだ!」と喜んでいる姿も見られるようになり、息子なりの世界の広がりにも繋がりました。

また、少人数のなかで先生とやりとりをする、友だちとやりとりをする練習もできていたのも、入園前には息子にとってプラスになっていたと思います。

幼稚園に通う息子

年少の1年間は本当にあっという間でした。
幼稚園が始まってすぐの頃に比べると、お友だちもできてお歌を上手に歌ったり、家ではしないような遊びを楽しんでいる姿もあります。

日々の幼稚園生活が息子にとって全力で過ごせる時間・空間になるように気を付けていることや工夫していることを挙げておこうと思います。

朝の用意 準備カードは必要?

よくSNSなどでも見かけるお仕度カードや準備カードと呼ばれるものですが、息子は準備カードを使用せずに朝のお仕度をするようにしています。
自立を促し、自分で準備することを楽しめるという点ではカードはかなり有効だと思います。
息子も、視覚的な情報の処理はどちらかというと得意なので、カードを用意してあげれば朝の用意がもっとスムーズに進むだろうとも思います。

ですが、入園前にどうやって自分で用意させるか考えた時に、準備カードを使うことで視覚の情報に頼るあまり、耳からの情報を処理しようとしなくなることを懸念しました。

幼稚園で先生からの指示は基本的には口頭ですから、家でも口頭で聞き取る力を伸ばしていくようにしています。
「タオル持った?」「コップ持った?」と全てを聞いて確認したり、お着替え袋や絵本バッグなどイレギュラーな持ち物があると口頭での用意はかなり時間がかかることがあります。

しかし、スムーズさ、やりやすさよりも息子の苦手を克服していく時間として朝の用意は準備カードなしで進めています。

もちろん、視覚情報を得ることでスムーズになる利点に重きを置けば、準備カードを使った方が息子はより楽しんで用意をできるかもしれません。今のところは音の情報を得る練習に朝の用意の情報量が息子にとってはちょうど「少し頑張る」程度になっています。

母子分離できないことに焦らない

母子分離の練習のために預かり保育に通ってはいたものの、実際に通い始めてから2か月くらい、息子は一人で幼稚園に行けませんでした。
電車通園ですが、毎朝一緒に電車に乗り、教室の前まで送りに行き、泣きわめく息子を先生にお願いして早足で帰る日が続きました。

幼稚園に通うのは毎朝母親と離れるということが息子にとってなかなか理解できないことだったようで、「なぜお母さんとバイバイなの?」とよく泣いていました。

おそらくこうなるだろうと思っていたことと、幼稚園の先生方が泣くようなら幼稚園までは送ってあげてください、という子どもの気持ちを尊重する考え方だったということもあり、息子が自分から「行ってきます」ができるようになるまでこちらから無理に一人で行かせようとするのはやめておきました。

夏休みの少し前に、息子が私の手を離して自分から列に入っていったので、付き添い登園は終わりになりました。

幼稚園が始まってすぐの頃には、周りの子でも朝泣いて集団登園ができないと悩むお母さん方がいましたが、夏頃にはほとんどの子が泣かずに集団登園できるようになっていました。

「他の子は行けてるのに」と比べるのではなく、自分の子どものペースで独り立ちしていくのを親は見守ってあげる姿勢も大事に思います。

家の居心地が良くなるように

息子は幼稚園の楽しかったこと、悲しかったこと、覚えていることをとにかく家でよく話します。
その内容はいい話ばかりでない時もありますが、息子なりに幼稚園で悩んだ姿もよく分かります。

息子の話には極力耳を傾け、必ずコメントするようにしています。
コメントは必ず共感するもの、その上で息子が何か問題を抱えていたならアドバイスをします。

息子にとって「お母さんは話を聞いてくれる」「お母さんは味方でいてくれる」という安心感が次の日も幼稚園を楽しもうという気持ちに繋がるのではないかなと思って、息子との会話は常に息子の寄り添うようにしています。

時間を守る

ルーティンが決まっている方がいい息子には、夜寝る時間、朝起きる時間、朝ご飯の時間や準備の時間まで全ての時間を守るようにしています。
時間が決まっていることで自分から何をするのか分かり、息子が自ら進んで用意をできるようになってきました。

時間に余裕ができることで幼稚園に行く前にリラックスして過ごせ、幼稚園でも集中して過ごせているのではないかと思います。

平日は基本的には寝る時間など固定し、イレギュラーなお出かけやイベントを入れないようにしています。
海外では夜しっかり寝ていることが子どもの情緒の安定に繋がるというのが育児をしている母親たちの一般的な考えとして浸透していて、日本の子どもの睡眠時間は先進国のなかでもかなり下の方と聞いてこともあります。

幼稚園での生活が息子にとって発達のいい空間であることを最大限に生かすために、眠くて集中できない、疲れていて集中できないといったことのないように過ごさせてあげたいと思います。

幼稚園は大きな一歩

どんなお子さんにとっても幼稚園に入るのは、育児のなかで大きなステップと捉えられるでしょう。
グレーゾーンを経てきたお子さんなら幼稚園に懸ける思いはなおさら強いのではないでしょうか。

息子の幼稚園選びから始まって、入園してからでも息子の幼稚園生活には常に不安や心配が付きまとっています。

夫婦で息子の成長をどうサポートしてあげられるか、どんな成長をしてほしいか、そんな話ばかりが続く日もあります。
幼稚園から喜んで帰ってきた息子も、少し悲しそうにして帰ってきた息子も、親と幼稚園の先生で協力して成長を見守っていければと思う毎日です。

これから幼稚園というお子さんには、新生活が子どもに与えるストレスや刺激をよく理解して受け止めてあげられることが必要ではないかと思います。
母子ともに素敵な新生活のスタートになるよう、素敵な集団生活の場に巡り合えますように。

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